『図解入門よくわかる 最新ベイズ統計の基本と仕組み』のレビュー

概要
『図解入門よくわかる 最新ベイズ統計の基本と仕組み』という本の書評。ベイズ統計学の基本的な考えを広く浅く紹介した書籍であり、ベイズ統計学の雰囲気をつかむ分には有用である。ただし、教科書というわけではないので、しっかり学びたい人は別の書籍を見る必要がある。

はじめに

図解入門よくわかる 最新ベイズ統計の基本と仕組み』というベイズ統計を簡単に紹介した本を読んだので、どういう本なのか紹介したいと思う。

この本は全くの初心者に向けて、ベイズ統計を紹介した本である。ベイズ統計の基本的な考えがどのようなものであるかを広く浅く紹介している。つまり、ベイズ統計では、どのように物事を捉え、さらにどういった応用があるのかについて説明している。詳しく書かれた教科書というわけではない。ただし、編集がきちんとなされていなかったようで、誤植が多い。

特徴

ベイズ統計ではどのように物事を捉えるかを書いている書籍であり、ベイズ統計の雰囲気をつかむ分には有用だと思う。ただし、教科書ではないので、これでベイズ統計の手法が身につくかと言えば身につかないと思う。しっかり身につけたいのならば、他の入門書を読んだ方が良いだろう。この本の著者である松原望は、他にも色んなベイズ統計の入門書を書いている。

この本は、こういった初心者向けの書籍としては珍しく、数式を使うことを避けていない。ただ、数式の読み方が分からなくても、この本を理解するには別に困りはしないと思う。もちろん数式の読み方を知っていた方が、理解はしやすい面はあるが。もしベイズ統計をしっかり身につけたいというのであれば、数式にしっかり取り組む必要があるが、そのような場合はこの本でなく別の本を読むことをおすすめする。

統計に関する事項を紹介する順番は、割合と大胆なものであり、普通の教科書では見られないような順番で紹介を行っている。例えば、普通の統計の教科書では、最頻値・中央値・平均値といったものは比較的早い時期に習うが、この本では、5章に入って初めてちゃんと紹介される(この本は合わせて6章である)。普通の教科書の場合は、積み上げが大事なので順番が大事になってくる。しかし、この本はしっかりとした教科書というわけではないので、その場で理解しやすいように大胆な順序をとっているのであろう。

第5章と第6章はベイズ統計学の応用となっているが、応用の詳しいやり方は書かれていない。どのような応用があり、その応用が大体どのようなものなのかを簡単に記すのみである。もしもこの本を読んで興味を持った応用があったならば、その応用について詳しく書かれている書籍を参照するのが良いだろう。

練習問題

理解を助けるための練習問題が、各節の終わりに付されている。著者自身が、

練習問題のかなりのものは、正直言って‘やさしい’あるいはレビューで、理解を確かにしたり自信をつけるためのもので、ぜひ試してほしい。

『図解入門よくわかる 最新ベイズ統計の基本と仕組み』p.3

と書いているように、簡単なものばかりである。実際のところ、本文で説明している内容の一歩手前の知識を問う練習問題が多いようだ。つまり、本文の内容を直接問うたり、本文の応用を問うているのではない。それでも、理解を助けることは助けていると思う。Excelで計算してみようといった練習問題もある。ただし、Excelでの統計処理について詳しく書かれているわけではないので、Excelに慣れていない人だと、練習問題を解くときにつまづくかも知れない。

なお、練習問題の解答は、秀和システムのWebサイト上のサポートページにある。

誤植・編集ミスなど

先に少し触れたが、編集がきちんとなされていなかったようで、誤植が多い。一応、正誤表がサポートページに掲載されているが、この正誤表に載っていない誤植もまだある。また、これは趣味の問題かも知れないが、本文の中の数式の組み方が美しくない。

主な内容

主な内容は以下の通りである。

第1章 ベイズ統計学とは

第2章 確率とベイズの定理

第3章 ベイズ統計学の基礎

第4章 ベイズ統計実践のための基礎ツール

第5章 ベイズ統計学の応用(1)

第6章 ベイズ統計学の応用(2)