(言語学の)卒論を書くときに役立つウェブサイト

概要
論文を書く際の心構え、文章の構造の設定、文章表現などの情報を掲載。言語学特有の話もあるが、それ以外の分野の人にも通じるところがある。

はじめに

今回は、言語学に関係する卒業論文を書くに当たって役立つウェブサイトをいくつか紹介しようと思う。まずは、卒論のための研究の行い方について紹介した記事や冊子を紹介したい。その後、実際に卒論を文章にするときの文章表現方法などについて触れた記事などを紹介するつもりである。

タイトルとしては、一応「言語学の卒論」だが、日本語学・国語学や英語学その他の外国語学について卒論を書こうとしている人も対象としている。また、文章表現法などは、言語学に限らず、他のどの分野でも役立つので、言語学と全然関係ない人もよろしかったら参考にしてもらいたい。

卒業論文に当たっての心構え

卒業論文のための研究は、高校までの学習、あるいは大学の普通の授業での学習方法とは違った方法で進めていくことになる。自分が何をするのか、したいのかということをはっきりさせないとすぐに道に迷ってしまうだろう。また、ほとんどの人にとって研究するということは初めての経験だと思う。色々と覚えることもあるので、あらかじめしっかりと卒論を書くには何をすれば良いのか確認しておいた方が良い。

『外大生のための日本語研究ガイドブック』

まずは、『外大生のための日本語研究ガイドブック』(PDF)という小冊子を紹介しよう。この小冊子は、東京外国語大学で作られたもので、日本語を研究する場合、どういう方法で行えば良いか書かれている。タイトルに「日本語研究」とあるが、他の言語の研究の時にも応用できるので、何語を研究するにせよ一読することをお勧めする。

この本は主に、先行研究の集め方と(日本語の)用例の集め方について書かれている。論文の書き方について書いた本には、大概先行研究の集め方について書かれている。しかし、用例の集め方は書いていないことが多い。このため、この外大の小冊子のように、用例の集め方について触れたものは貴重である。

『信頼される論文を書くために』

次に、東京大学教育学研究科 [1] が作った『信頼される論文を書くために』(PDF)という小冊子を紹介したい。この小冊子は、言語学をする人のために書かれたものではなく、教育学関係の人のために書かれたものである。しかし、教育学のものと言っても、内容は言語学をする人にも非常に役立つ。

この冊子はまず論文を書くとはどういうことなのかについて述べている。その後、実際に論文を書くに当たっての注意点を色々と書いている。「信頼される」データをとるためにはどうすれば良いかということも書かれている。言語学は、実際の言語データに即して議論をしていく必要がある。このため、言語データが信頼の置けるものでないとしたら、いかに論理が素晴らしくても、ダメな論文になってしまう。だから、信頼されるデータを集めることは大事なのだ。

『言語学における卒業論文執筆の手引き』

神戸大の松本曜教授が作った「言語学における卒業論文執筆の手引き」 というものがある。とにかく読んでおこう。姉妹版として、「言語学における修士論文・博士論文執筆の手引き」というのもある。卒論を書く人でも、修論・博論の手引きの方を一読することをお勧めしておく。

内容は多岐にわたるが、どのように研究していくのか、どのように論文の中で議論を進めるのか、どのようにデータを提示していくのかということがメインになるだろうか。

その他

この他、論文を書くとはどういうことなのか、テーマをどうやって見つけていけばよいのか、どう研究を進めればよいのかといったことについて触れた記事を以下に並べておく。

論文の書き方(一般論)

さて、論文のテーマを決め、データを大体収集し終え、議論の方向性も決まってきたとしよう。あとは、実際に論文を書くだけである。ここでは、言語学に限らず、どの分野でも共通するような論文の書き方の一般論について触れる。言語学特有の話はその後に述べる。

論文を書く際には、一定の作法というものがある。1ページに何文字入れるのか、引用はどのような形式で行うのか、図はどこに配置するのか、こういったことにはみな作法がある。ただ、こうした作法は、分野によって少しずつ異なっている。確実なのは、卒論指導担当の先生に聞くことだ。先生の言うことを聞こう。それで間違いはない。

論文の構造を学ぶ

論文には決まった構造がある。決まった構造に従って議論しないと訳が分からない論文になってしまう。論文の構造については、市販されている論文の書き方についての書籍を読んだ方が良いと思うが、ウェブ上にもいくつか記事があるので、以下に挙げておく。

論文でよく使う表現

学術的な文章の文体は、日常生活の文体とは大きく異なっている。このことをわきまえずに、日常生活の文体のよ うに卒論を書いたとしたら、悲惨なものとなってしまう。そうならないためにも、論文でよく使う表現を覚えておこう。なお、日本語・英語とも、論文で使う表現について扱った本は色々出ているので、大学近くの書店で探してみよう。あとは、実際に卒論を書いてみたら、他の人に見てもらって表現の良くないところを 指摘してもらうようにしよう。自分では問題ないと思っていても、他人が見ると訳が分からないと言うことは良くあるためだ。

日本語

さて、日本語で論文を書く場合の表現について述べたウェブサイトをいくつか紹介しよう。

英語

次に、英語で論文を書く場合について紹介しよう。

壁にぶつかってしまったら

実際に卒論を書いていると、壁にぶつかることがあると思う。だが、壁を壊すなり乗り越えるなりしないと、卒業できないことになってしまう。つらいだろうが頑張ろう。壁にぶつかったときに参考になる記事を2つ挙げよう。

論文の書き方(言語学特有の話)

今までは卒論一般の話をしてきたが、ここからは言語学特有の話をしたい。

LaTeX の勧め

卒論を書くとなると、多くの人が Word を使うと思う。だが、あれは論文を書くのにはあまり向かない。実は、LaTeX というものがあり、これは少し取っつきにくいが、論文を書くときには重宝する。もし、卒論指導の先生が LaTeX を使う人なら、卒論を書く際に LaTeX を覚えて LaTeX で書いたほうが楽だと思う [2] 。しかも、LaTeX で書くと綺麗に出てくる。

言語学の論文を書くときの LaTeX の長所・短所については、「言語学の人間がTeXで論文を書くことの意義を本気出して考えてみた」(おなかがすいたらあまいものをたべよう)を参照されたい。例文や文献の処理は、LaTeX が楽である。

また、少し情報が古いが、「言語学でLaTeXを使うための情報があるWebサイトまとめ」という記事もある。この他、「LaTeX で言語学の論文を書くために」(PDF)というものもある。これは著者のウェブサイトからは消えているようだが、インターネットアーカイブにPDFが残っている。

グロス

グロスとは例文を単語ごとに訳し、文法的な注解を加えたものである。論文に使用している言語と違う言語の例文を挙げる [3] 際には、グロスをつけなくてはならない。グロスの書き方については、Leipzig Glossing Rules が参考になるだろう。

IPA (国際音声字母)の入力

音声について研究する人は、論文に IPA (国際音声字母)を載せる必要があるかもしれない。IPA の入力に当たっては、IPA Keyboard というウェブサイトが使える。このウェブサイトの IPAの表をクリックすると、対応する記号がテキスト欄に出力されるので、これをコピー&ペーストですれば良い。

よほど変な記号を使わない限り、IPA はちゃんと表示されると思うが、もし表示されないようだったら、SIL International [4] のウェブサイトに行き、そこで配付されている IPA のフォントをインストールすると良い。

統語ツリーの入力

前に、統語ツリーの描き方について、このブログに「統語ツリーを描く3つの方法」という記事を書いたのでそちらを参照されたい。

中国語学の卒論を書く場合

中国語学の研究者のためのインターネットリソース」という項目をこのブログに書いたので、参照されたい。

脚注
  1. 教育学部の上にある大学院 []
  2. 先生が LaTeX を使わない人なら素直に Word を使おう。 []
  3. 例えば英語を使って論文を書いているときに、日本語の例文を出す場合など。 []
  4. キリスト教系で、聖書翻訳のために世界の言語の情報を集めている団体。 []